書籍名:サピエンス全史(上)
著者:ユヴァル・ノア・ハラリ
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ー書籍からー
認知革命の結果、ホモ・サピエンスは噂話の助けを得て、より大き くて安定した集団を形成した。だが、噂話にも自ずと限界がある。 社会学の研究からは、噂話によってまとまっている集団の「 自然な」 大きさの上限がおよそ150人であることがわかっている。ほとん どの人は、150人を超える人を親身に知ることも、それらの人に ついて効果的に噂話をすることもできないのだ。
今日でさえ、人間の組織の規模には、150人というこの魔法の数 字がおおよその限界として当てはまる。この限界値以下であれば、 コミュニティや企業、社会的ネットワーク、軍の部隊は、 お互いに親密に知り合い、噂話をするという関係に主に基づいて、 組織を維持できる。
効力を持つような物語を語るのは楽ではない。難しいのは、物語を 語ること自体ではなく、あらゆる人を納得させ、誰からも信じて貰 うことだ。歴史の大半は、どうやって厖大な数の人を納得させ、 神、あるいは国民、あるいは有限責任会社にまつわる特定の物語を 彼らに信じてもらうかという問題を軸に展開してきた。
とはいえ、この試みが成功すると、サピエンスは途方もない力を得 る。なぜなら、そのおかげで無数の知らぬ人どうしが力を合わせ、 共通の目的のために精を出すことが可能になるからだ。
想像してみて欲しい。もし私たちが、川や木やライオンのように、 本当に存在するものについてしか話せなかったとしたら、国家や教 会、法制度を創造するのは、どれだけ難しかったことか。
もし何千頭ものチンパンジーを天安門広場やウォール街、ヴァチカ ン宮殿、国連本部に集めたとしたら、大混乱になる。それとは対照 的に、サピエンスはそうした場所に何千という単位でしばしば集ま る。
サピエンスは一緒になると、交易のネットワークや集団での祝典、 政治的機関といった、 単独ではけっして生み出しようのなかった整然としたパターンを生 み出す。私たちとチンパンジーとの真の違いは、 多数の個体や家族、集団を結びつける神話という接着剤だ。 この接着剤こそが、私たちを万物の支配者に仕立てたのだ。
人類の進化した特徴とは何だろう?「生命」は間違いなく含まれる 。だが、「自由」は?生物学には自由などというものはない。平等 や権利や有限責任と全く同じで、自由は人間が創造したもので、 人間の想像の中にしか存在しない。
生物学の視点に立つと、民主的な社会の人間は自由で、独裁国の人 間は自由がないと言うのは無意味だ。それでは「幸福」はどうだろ うか?これまでのところ生物学の研究は、幸福の明確な定義や、幸 福を客観的に計測する方法を生み出せずにいる。
ほとんどの生物学的研究は、快楽の存在しか認めていない。快楽の 方が定義も計測も簡単だからだ。
ハンムラビ法典は神話だと受け容れるのは簡単だが、人権も神話だ という言葉は聞きたくない。もし、人権は想像の中にしか存在しな いということに人々が気がつけば、私達の社会が崩壊する危機はな いのか? ヴォルテールは神についてこう言っている。「神などいないが、私 の召使には教えないでくれ。さもないと、彼に夜中に殺されかねな いから」と。
ホモ・サピエンスには自然権などないし、それはクモにも、ハイエ ナにも、チンパンジーにも自然権がないのと同じだ。だが、私達の 召使には教えないで欲しい。さもないと、私達は彼らに殺されかね ないから。
貨幣は相互信頼の制度であり、しかも、ただの相互信頼の制度では ない。これまで考案されたもののうちで、貨幣は最も普遍的で、最 も効率的な相互信頼の制度なのだ。
この信頼を生み出したのは、非常に複雑で、非常に長期的な、政治 的、社会的、経済的関係のネットワークだった。なぜ私は金貨やド ル紙幣を信頼するのか?なぜなら、隣人たちがみな、 それを信頼しているから。そして、隣人たちが信頼しているのは、 私がそれを信頼しているからだ。
私達がドルを何かの対価として受け容れるのは、アメリカの財務長 官を信頼しているからだ。私達の金融制度が政治や社会のやイデオ ロギーの制度とこれほど緊密に結びついている理由や、政治の成り 行きで金融危機がしばしば引き起こる理由、ある日の朝、投機家た ちがどんな気分かで株価が上がったり下がったりする理由も、 信頼が果たす決定的な役割で説明できる。
哲学者や思想家や預言者たちは何千年にもわたって、貨幣に汚名を 着せ、お金のことを諸悪の根元と読んできた。それは当たっている かもしれないが、貨幣は人類の寛容性の極みでもある。 貨幣は言語や国家の法律、文化の基準、宗教的信仰、 社会習慣よりも心が広い。貨幣は人間が生み出した信頼制度のうち 、ほとんど文化の間の溝を埋め、宗教や性別、人種、年齢、性格指 向に基づいて差別することのない唯一のものだ。貨幣のおかげで、 見ず知らずで信頼し合っていない人どうしでも、効果的に協力でき る。
ーここからー
こ存じの通り我々の祖先はホモ・サピエンスです。ネアンデルター ル人や北京原人でもなく、ホモ・サピエンスです。様々な人種が過 去の地球には多数生存をしてましたが、現在に生き残っているのは ホモ・サピエンスだけです。
諸説いろいろありますが、有力なのはホモ・サピエンスが他の種族 を滅ぼしたです。ではなぜホモ・サピエンスが他の種族を圧倒する ことができたのでしょうか。
骨の分析結果からだと、他の種族の方がホモ・サピエンスよりも骨 格的に優れていたことが明らかになっています。 我々が他の種族と決定的に違っていたのは、「認知力」があったこ とです。この認知力があったからこそ、 他の種族よりもより多くの人が分かり合えることができたのです。 ゆえに国家も生まれることができたのです。
書籍でお伝えしてきたことは、全て「認知」に関することです。 認知の中でも目の前にある物を認知、認めることは他の種族でもで きましたが、目に見えないモノを認知、認めることができたのが我 々だけだったのです。
具体的に目に見えないモノの代表例が「神」です。もっとリアルで 考えた場合は、国、国家、資本主義、社会主義、貨幣、紙幣、 法律、会社、人権などです。法律を紐解けばわかることですが、 会社を法人、すなわち人としてみなしています。 普通に考えれば変ですよね。
でも普通に生活している限り、誰もが違和感を感じていません。 すなわち「法人を人とみなす」を私たちが認めているのです。 人権に関して違和感を感じる人もいるかと思いますが、これも同じ です。要は我々によって、いいように解釈し、 認知しているのです。
とするならば、数世紀前まで奴隷制度があったのも、ちょっと前ま で女性蔑視があったのも、ほんの少し前まで同性愛が認められてい なかったのも、我々にとって、不都合=認知できなかったからに過 ぎません。
では、認知は何から生まれてくるのでしょうか。それは「信頼」か らなんですね。全ては信頼関係から生まれてくるのです。
私は「そうか。ホモサピエンスである我々にとって、 全ては信頼関係から生まれてくるのか!」と気づいた時、人間関係 = 信頼関係と言ってきたことがストレートに結びついて腹落ちしまし た。人間関係=信頼関係というよりも、信頼関係という大きな箱の 中に人間関係があったのです。だからこそ、「信頼の土台」 は超重要だったんです。
このメルマガ登録者の中には、私があったことがない方も多々いら っしゃいます。少しでもこのメルマガを通じて信頼関係が構築でき ていたら幸いです。
改めて本年も宜しくお願い申し上げます。