Vol.62「50代からのキャリアの捉え方」

書籍名:「働き方」の教科書
著者:出口 治明
リンク: http://amzn.asia/iwrs5bo

ー書籍からー
■50代
50代はどのようなスタンスで仕事をするべきなのでしょうか。
役員レースに残っている人は、そのまま猛進していけばいいと思います。仮にレースから外れてしまった場合でも、企業にとどまってやるべきことをやる道もあると思います。ただその場合、これまでとは考え方を少しだけ変えて頂きたいと思うのです。 

50代になって心掛けるべきことは、次の世界を担う若い世代に何をバトンタッチするのかということを真剣に考えることだと思います。30年前後働いてくれば、内外のさまざまなことや問題点などはほぼわかっているはずです。企業を少しでもよくしていくために、若い世代にどういう仕事をしてもらいたいのか。そのことをよく考えて、伝えて頂きたいのです。そういう意味では、50代は「遺書」を書く時期になったのだと言えるでしょう。
 
企業に残って遺書を書き、それを次の世代に伝えるという選択肢以外に、50代には起業という選択肢があると思います。起業というと、それまで自分が積み重ねてきた仕事と異なる分野でチャレンジしなければならないと考える人もいるようです。起業とは、未知の分野でなければならないという固定観念がどこかに存在するからでしょう。
 
仕事は人と人、経験と経験の組み合わせです。今、あなたが何気なくやっている普通の仕事を必要としている人は、実は世の中に山ほどあるのです。
 
 
■アンヒューマンとヒューマン
僕がロンドンに赴任していたとき、スイス銀行とスイスユニオン銀行が合併することになりました。当時、スイス銀行の従業員3000人、スイスユニオン銀行にも3000人のスタッフがいました。オスペル(責任者)は、合併で6000人になった従業員を3000人に絞り込む決断をしました。
 
それを聞いて、僕は憤慨しました。
「そんなのはアンヒューマンだ。解雇された従業員はどうなるのだ?」僕の言葉を聞いたオスペルは、僕以上に憤慨してまくしたてました。「ミスターデグチ、アンヒューマンという言葉を取り消してもらいたい。むしろ、私のやろうとしていることこそヒューマンなんだ」
 
オスペルは、こう続けました。
「僕は日本企業のように、窓際族として飼い殺しにするほうがアンヒューマンだと考えている。ミスターデグチ、あなたはヒューマンの言葉を取り違えている。人間は給料を貰えて名刺さえあれば人生が楽しいわけじゃない。自分に向いたやりたい仕事を最前線でやるからこそ楽しいんだ」
 
 
ーここからー
人事の仕事をしているので感じるのかもしれませんが、キャリア研修って何のためにあるでしょうか。私は20代と50代のキャリア研修は根本から違っていると思っています。
 
バブル崩壊前の日本にキャリア研修は殆ど存在していませんでした。逆に言えば、キャリアについて考える必要が無かったのです。では21世紀になってキャリア研修が必要になった背景と理由はなんなのか?
 
背景は、少子高齢化と経済の低成長です。高度経済成長時代は多くの会社が右肩上がり、人口もどんどん増えてマーケットも拡大、それに伴い管理職のポストが足りず、普通に働けば管理職になってそこそこの生涯年収を稼ぐことができました。
 
つまりキャリアを考えなくても終身雇用という制度によって、ただ普通に頑張れば誰もが描く普通の幸せを得ることができたのです。
 
しかしながら、バブルが崩壊し、かつ、少子高齢化になり、経済が停滞している昨今では、その普通の幸せを得ることができない人が増えたのです。
 
それを表した言葉として、いい得て妙だなぁと思ったのが「サザエさん一家は勝ち組みだ」という言葉です。
 
サザエさん一家は普通の幸せ家族をモデルにしていたはずなのに、その幸せさえ掴むことが出来なくたったこを表している言葉で、とても衝撃的ですよね。
 
ここ10年でビジネスパーソンの年収は15%低下しました。年収400万以下の人が半数以上を占めている状況です。
 
企業は嘗てのように会社に骨を埋めてくれれば、それなりの待遇を準備することができなくなったのです。私が言わなくても皆さんよくご存じなことですよね。
 
だから、キャリアというものを仕事だけで捉えるのではなく、人生で捉えて考えくださいという研修が増えたのだと思っています。
 
しかしながら、この一番大事な点をオブラードに包んでキャリアを考えてというから何か歯に物が詰まったような違和感を私は感じています。
 
オスペルさんの言葉通り日本企業は50代以降(シルバー含む)を窓際族として飼い殺しにしていますが、人間は給料を貰えて名刺さえあれば人生が楽しいわけじゃない。自分に向いたやりたい仕事を最前線でやるからこそ楽しいんだと私も思います。
 
昨年の12月に58歳の大先輩が自己都合で会社を辞めました。なんで辞めるんですかと聞いたら、このぬるま湯状態に嫌気がさしたから辞めるんだよと仰っていました。
 
50歳を過ぎるとリスクが減って来るんだと実感した言葉でした。この方の場合は既に子供も社会人になり、家のローンもない。つまり、リスクが嘗てより大幅に減っていた為、会社に縛り着くよりも一度きりの人生を後悔しないために退職したのです。
 
50代のキャリア研修では、これからの人生をどうしますか?という研修が多いですが、私の考えでは、今までの人生を振り返り、次世代の人達に何を恩返しすることができるかを考えた方がよいと思っています。
 
その恩返しが自社でできるならそれで良し。それが出来ないなら転職や起業も視野に入れていいのではと思っていますが、皆さんは如何ですか。
 
会社はそのような恩返しをしたい人達に責任と権限を与えて欲しいのです。責任と権限は別段、地位や役職だけではなく、プロジェクトもあれば、勉強会などもあります。またはご意見番や参謀でもいいのではないでしょうか。
 
今回はちょっとディープな話となってしましましたが、とても重要なことで目をそらしてはいけない点だと思ったので、書かせて頂きました。
 
あなたはキャリアをどのように捉えていますか。